北アジア、東欧に位置するロシア連邦には、地球の大きさ形状などを正確に知る上で多大な貢献をした三角測量のために設置された三角点群「シュトルーヴェの測地弧」、数世紀に跨りロシアとカザン汗国の文化交流に重要な役割を担った象徴的な遺跡「ボルガルの歴史的考古学的遺跡群」など、中世から帝政ロシア時代までの伝統的な文化を示す華麗な建造物、宮殿、ロシア正教の教会、修道院、イスラム・モスクなどの象徴的な世界遺産(文化遺産)が引き継がれています。
地球の大きさや形状は、紀元前4世紀頃から自然科学の最重要課題の1つとされていましたが、16世紀に進展した「三角測量」と呼ばれる測量システムは、地球の大きさと形状を決定する能力を向上させています。
シュトルーヴェの測地弧は、ノルウェーのハンメルフェスト(Hammerfest)からウクライナのスタラ・ネクラシウカ(Stara Nekrasivka)まで10ヶ国を通過、2820km以上にまたがる子午線測量のために設置された三角点群です。
ボルガルの歴史的考古学的遺産群は、タタールスタン共和国の南西部、モスクワの東約730km圏内に位置、カマ川の南とヴォルガ川の合流点のほとり、7世紀~15世紀にヴォルガ・ボルガル人が残した歴史的な史跡、城壁や堀、モスク、ハンの宮殿、ミナレット、いくつかの霊廟、浴場など、宗教と国家構造との空間環境を保持する都市遺跡が引き継がれています。
ドイツ系ロシア人天文学者フリードリヒ・ゲオルク・ウィルヘルム・シュトルーヴェ(Friedrich Georg Wilhelm Struve、1793年~1864年)の指揮のもと、数人の学者(測量士)により1816年から1855年に実施され、長距離にわたる調査で、測地学において子午線を初めて正確に測量。
この三角測量は、地球の大きさと形状を確立するために貢献し、地球科学や地形図作成における重要なステップとなっています。
シュトルーヴェの測地弧は、共通の科学的要因のために、さまざまな国の科学者だけでなく、異なる君主間による共同作業の並みはずれた例と評されています。
英語表記:Struve Geodetic Arc
所在地:ロシア連邦、フィンランドなど10ヶ国 N59 3 28 E26 20 16(緯度 経度:度分秒)
登録基準 (ii)(iii)(vi) 2005年登録
シュトルーヴェの測地弧 各国の位置・座標
ボルガルの歴史的考古学的遺産群には、キプチャク汗国(ジョチ・ウルス)の末期、カザン・汗国とロシアとの伝統文化の相互影響を表す、歴史的継続性と文化的多様性の顕著な証拠を提供する遺跡群が残存。
交易の中継点に位置するボルガルはヴォルガ・タタール人の神聖な巡礼地として、都市文化と遊牧民との経済、文化、政治的コミュニケーションの相互作用を提示、数世紀に跨るユーラシアの歴史的文化交流の変遷を表し、文明の習慣や文化的伝統の形成に重要な役割をボルガルは果たしています。
英語表記:Bolgar Historical and Archaeological Complex
所在地:タタールスタン共和国ボルガル N54 58 44 E49 3 23(緯度 経度:度分秒)
登録基準 (ii)(vi) 2014年登録
タタールスタン共和国(Bolgar,Tatarstan) 主な観光地
ボルガル(Bolgar) N54 58 02.4 E49 02 04.7 ※ ⇒ Google Map
アブラハムブルガリア教会(Tserkov' Avraamiya Bolgarskogo) N54 58 32.6 E49 01 46.4 ※ ⇒ Google Map