東アジアに位置する中国(中華人民共和国)には、広東省開平一帯から海外流出した中国華僑の歴史、社会形態を垣間見る「開平の望楼群と村落」、客家の人々が生活と防衛を集団で行う独特の集合住宅形式「福建土楼」など紀元前から19世紀まで隆盛を誇った中国王朝の史跡が点在する王宮跡、宗教建造物、独特な版築建造物が世界遺産(文化遺産)として引き継がれています。
広東省の位置する「開平の望楼群と村落」は、華僑洋館とも呼ばれ、華僑の歴史、社会形態および文化伝統を描写する独特な建築群。
開平一帯は頻繁に洪水に襲われ、社会秩序も乱れていた為、不測の事態に備え、防御のための頑丈な望楼を続々と建てています。
16世紀の明代から望楼建設が始まり、河川の洪水対策、政情不安、馬賊、盗賊の略奪を避けるため多層構造の建造物になっています。
福建土楼(ふっけんどろう)は、中国福建省南西部の山岳地帯に点在し、客家(漢民族)の人々が生活と防衛を集団で行う独特の集合住宅形式。
地震対策、防火、獣や外敵の襲来に備えて造った大規模な山岳民家建築は、要塞のように窓が少なく入り口は通常一つで鉄板で頑丈に補強された板戸で守られています。
生活必需品はすべて揃い、一部落ような百数十世帯が一緒に住むことができ、外部との接触もせずに数カ月間、籠城できるといわれています。
明代から始まった望楼建設の最盛期は、清王朝末期で、広東省一帯はアヘン戦争やポルトガルのマカオ植民地化、客家と本地人の争い(土客械闘)、洪水などの社会不安が頻発。
一方、19世紀中頃からの北米大陸では、大陸横断鉄道建設やゴールドラッシュ期に入り大量の労働力が必要となっていた為、生活を脅かされた多くの人々が開平一帯から新天地を求め北米などの海外へ流出。
労働力需要で多くの中国移民を受け入れた北米では、1882年に中国移民を一時停止することした移民法が成立、北米の急速な経済発展により財を成した開平一帯の華僑達も、帰国を余儀なくされ、多くの人が故郷へ戻ります。
西洋文化の影響を強く受けて帰国した華僑達は、賊から財産を守るために中国と西洋建築を取入れた多種多様な望楼を建築、一般住宅よりは高く、壁は厚く頑丈で、窓の位置は高く小さく、外側には鉄格子、外敵を防ぐ鉄板の窓と扉が付けられている独特の建築物。
望楼は、衆楼、居楼、更楼の3つに分類され、数軒の家庭、または村落ごとに建設費用を共同出資したのが衆楼で、緊急避難時には各家庭に一つの部屋が割与えられます。
高層の大部屋で生活必需品も完備、防御機能をもち、生活もできる居楼は財を成した豊かな家々が独自に建設、村の外、丘の上、川岸に建てられた更楼は、賊を発見するための警備システムを担っています。
英語表記:Kaiping Diaolou and Villages
所在地:広東省 N22 17 7.87 E112 33 57.1(緯度 経度:度分秒)
登録基準 (ii)(iii)(iv) 2007年登録
開平の望楼群 観光地
開平碉楼群:所在地 広東省開平市 N22 21 39 E112 35 09.7 ※ ⇒ Google Map
自力村碉楼群:所在地 広東省開平市 N22 21 37.5 E112 35 11.8 ※ ⇒ Google Map
自力村(Zilicun):所在地 広東省開平市 N22 22 17.2 E112 34 47.6 ※ ⇒ Google Map
福建土楼は、古代中国の風水思想をとりいれた伝統的な集合住宅、建造初期は中国史の宋末期から元時代とされ、独特の建築スタイルを持った客家の民家建築。
永定土楼、振成楼、承啓楼、遺経楼、南靖土楼、田螺坑土楼、二宜楼などの土楼があり、形状は円楼、方楼、五鳳楼、半円型となっています。
福建土楼の代名詞とも呼ばれる永定土楼は、独特の円楼で面積も広く、最大のもので直径71m、数階建築で3階以上が居住空間となっています。
発展する中国経済のなか、よりよい住宅を求め土楼を出ていく人もいるようですが、現在でも数百人以上が土楼のなかで普通の生活を営んでいるようです。
世界遺産(文化遺産)には、福建省南西部約120km以上にわたって点在する46棟が登録されています
英語表記:Fujian Tulou
所在地:福建省龍岩市永定区:N25 1 23 E117 41 9(緯度 経度:度分秒)
登録基準 (iii)(iv)(v) 2008年登録
福建土楼 観光地
永定土楼:所在地 福建省龍岩市永定区 N24 39 10.2 E116 58 36.9 ※ ⇒ Google Map
高北土楼群:所在地 福建省龍岩市永定区 N24 45 22.0 E116 49 08.6 ※ ⇒ Google Map
振成楼:所在地 福建省龍岩市永定区 N24 38 42.2 E116 58 27.4 ※ ⇒ Google Map
承啓楼:所在地 福建省龍岩市永定区 N24 39 36.8 E11700 32.8 ※ ⇒ Google Map
南靖土楼:所在地 漳州(しょうしゅう)市南靖県(なんせいけん) N24 35 03.5 E117 03 45.2 ※ ⇒ Google Map
田螺坑土楼:所在地 漳州市南靖県 N24 37 38.6 E117 06 58.4 ※ ⇒ Google Map
二宜楼:所在地 漳州市華安県(かあんけん) N25 01 24.9 E117 41 38.9 ※ ⇒ Google Map
登録年度順 | 登録名 | 登録区分 |
1 | 九寨溝渓谷景観と歴史地域 | 自然遺産 |
2 | 黄龍の自然景観と歴史地域 | 自然遺産 |
3 | 武陵源の自然景観と歴史地域 | 自然遺産 |
4 | 雲南の三江併流保護区 | 自然遺産 |
5 | 四川省のジャイアントパンダ保護区 | 自然遺産 |
6 | 中国南方カルスト | 自然遺産 |
7 | 三清山国立公園 | 自然遺産 |
8 | 中国丹霞 | 自然遺産 |
9 | 澄江の化石出土地域 | 自然遺産 |
10 | 新疆天山 | 自然遺産 |
1 | 泰山 | 複合遺産 |
2 | 黄山 | 複合遺産 |
3 | 峨眉山と楽山大仏 | 複合遺産 |
4 | 武夷山 | 複合遺産 |